2009年10月20日火曜日

眼振検査では何を見ているか

眼振には生理的な眼振と非生理的な眼振がある。たとえば、視運動性眼振や温度眼振は生理的眼振である。もし適切な視運動刺激によって視運動性眼振が誘発されなければ何らかの病態が神経系に存在することが示唆される。温度眼振も同様である。意識が鮮明であるにもかかわらず氷水刺激でも温度眼振が誘発されなかったとしたら明らかに異常といえる。
 
反対に、自発眼振や注視眼振は非生理的な眼振といえる。つまり、これらの眼振は健常人には認められない。換言すれば、もしこれらの眼振が認められれば、それだけで神経系に何らかの異常が存在するといえる。
 
眼振検査を進めるにあたって常に留意しておかなければならないのは、「出現すべき眼振が出現するか」という点と、「出現すべきではない眼振がほんとうに認められないか」という点である。
 
眼振検査を進めるにあたってもうひとつ重要なことは、出現すべき眼振の強度と性状に異常がないかどうかという点に留意するということである。温度眼振が左右どちらの耳を刺激した際に出現したとしても、その強度に高度の左右差があれば、何らかの異常があるのではないかと推測される。
 
もうひとつ重要な点は、眼球運動や眼振の発現に関与する神経系のヒエラルヒー(上下関係)の逆転現象が起きているのではないかという点に注目するということである。たとえば、固視機能に関与する機構は視運動性眼振を発現させる機構よりも高位の神経機能である。したがって視運動刺激の最中にレーザポインタなどを使用して一点を固視させると視運動性眼振は著しく減弱もしくは消失する(図1)。同様に固視機能は前庭眼反射や温度眼振よりも高位にある(図2、図3)。
 
固視により抑制されることが末梢前庭性眼振のひとつの特徴である。固視機能は中枢神経系の機能であるため、もし固視抑制が認められなければ何らかの異常が中枢神経系に生じていることが示唆される。
 

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